研究概要 |
歯周病の病巣には,圧倒的多数のグラム陰性嫌気性菌の増加が認められる。その中でCampylobacter rectusは,Porphyromonas gingivalisやActinobacillus actinomycetemcomitansのような主要原因菌に比べて検出頻度が少なく,また培養が難しいという理由から本菌に対する研究は数少ない。その為に感染メカニズムは今までほとんど知られていない。ところが最近になって進行性の歯周病局所に急増するといわれており,その実態を捉えることは意義のあることであると私どもは考えた。今までに得られた実績を略記すると以下の通りである。 1)培地の改良により本菌の大量培養に成功した。 2)全菌体をマウスに免疫して複数のモノクローナル抗体を取得した。 3)全菌体をウサギに免疫してポリクローナル抗体を得た。 4)2)のモノクローナル抗体を用いて諸性質を調べたところ,C. rectusに特異的な抗体であり,菌株によって若干菌体表層成分に違いが見られた。つまり,Heterogeneityの存在が示唆された。 5)臨床患者サンプルを用いて2)のモノクローナル抗体との反応性を見た結果,重篤な患者プラークを中心に本菌の存在を確認した。 6)3)のポリクローナル抗体を用いて染色体DNA制限酵素断片より本菌の遺伝子のクローニングを試みた。 7)C. rectusと共に重篤な歯周ポケットに存在するといわれるBacteroides forsythusもC. rectus同様,培養が困難である。そこで,B. forsythusについても上記の実験を執り行った。 1)から6)までは昨年度までに大まかな結果を得たが,6)に関する遺伝子クローニングは現在進行中である。同時に進行している,7)については表層抗原として特異的なS-layerに対する抗体が得られたので,さらなる解析を試みたい。
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