研究概要 |
1.酪酸を作用させ培養したヒトT細胞(PBMC及びJurkatTリンパ球細胞株)をPI染色しFACScanにかけて細胞周期を解析した。2.5mM以上の濃度の酪酸添加でCell cycleのG1期での停止が認められた。 2.細胞周期の進行における酪酸添加の影響をJurkat細胞を用いWB法にて経時的に解析した。高濃度酪酸添加24h後、G1初期のCyclin D3の発現低下が認められたがCyclin D1及びD2,更にサイクリン依存性キナーゼCdk4及びCdk6の発現に変化は認められなかった。また、Cdk4及びCdk6の特異的阻害剤であるp16及びp18の発現増加も認められなかった。一方、G1→S期移行期に活性化するCyclin E及びCyclin Aに対しては、酪酸添加により経時的な減少が認められ、更にそれらの依存性キナーゼであるCdk2の発現低下も経時的に認められた。Cdk-サイクリン複合体の阻害剤であるp21^<CIP1/WAF1>の発現変化はJurkat、Hela及びKB細胞において高濃度酪酸添加により発現増強が認められた。酪酸はまたG2→M期移行期に活性化するCyclin A及びCyclin Bの発現を経時的に低下したが、それらの依存性キナーゼであるCdc2に対しては影響を示さなかった。 3.T細胞中のアポトーシス関連遺伝子並びに細胞周期関連遺伝子発現の増減をDNAマイクロアレイを用いて比較検討した。高濃度酪酸刺激によりBax,Bad,Bakの亢進、Bcl-2の低下、ERKの低下やJNKの亢進、抗酸化作用に働くグルタチオンの低下、Caspase-3,-6,-7,-8,-9酵素群の活性化が認められた。 以上の結果から酪酸で誘導されるT細胞アポトーシスはCDKインヒビターp21KIP1/WAF1発現の増加と関連するCdk2-CyclinE及びCdk2-CyclinAの低下を介した細胞周期の停止を伴うものと推測された。
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