研究概要 |
アクチビンAは両生類胚において強い中胚葉誘導能を示し,初期胚の予定外胚葉領域(アニマルキャップ)未分化胚細胞から濃度依存的に胚の腹側から背側の中胚葉組織を誘導できる。さらに,アクチビンA処理後さらに1〜4時間インキュベーション後に,未処理アニマルキャップ二枚で挟み込むアニマルキャップサンドイッチ培養法により,アクチビンAの濃度および処理後時間に依存して,頭部から胴尾部構造が誘導される。これらのことから,アクチビンAと未分化予定外胚葉領域を用いる実験系により,正常胚における発生をin vitroで再現することが出来ると推測される。しかし,中胚葉組織の中でも軟骨は高度に分化した組織で,これまでアフリカツメガエル未分化胚細胞から軟骨への分化は報告されていなかった。そこで,アクチビンAと未分化予定外胚葉領域を用いて顎顔面軟骨の誘導を目標として研究を行った。その結果、アニマルキャップを高濃度のアクチビンAで処理後,1時間後に未処理のアニマルキャップで挟むアニマルキャップサンドイッチ培養条件において,培養7日目でアルシアンブルー陽性の軟骨様細胞や軟骨性組織がexplant内に誘導されていた。同explantにおいて,前方外胚葉由来組織に発現するXenopus Distalless 4ならびに頭部腹側に限局して発現するgoosecoidの発現が見られた。以上のことから,前方腹側間葉系細胞に由来する顎顔面領域に相当すると考えられる軟骨,すなわち,顎をin vitroにて誘導したことが示された。この誘導法は,細胞分化のみならず発生におけるパターン形成をも再現し,顎顔面領域に相当する軟骨を選択的に誘導できることから,脊椎動物の顎顔面発生の解析,再生医療への応用に有用なモデル系であると考えられる。
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