研究概要 |
TiO2光触媒反応は、生命体(医療機器・医学材料)への実用化へ向けての研究が進められている。本研究ではTiO2光触媒反応の歯科治療、口腔外科領域の治療への応用を目的とし、歯科用人工材料へのTiO2のコーティングによる殺菌効果や防汚効果およびTiO2微粒子と光照射による口腔癌治療への応用を試み、歯科口腔領域の疾患に対する安全性の高い治療方法の開発を検討した。 1.TiO2光触媒粒子の口腔癌治療への応用についての検討 1)ヒト口腔癌由来樹立培養細胞(SCC, ACC)の培養液中にTiO2粒子およびTiO2粒子と抗癌剤(アドレアマイシン)をしてHV照いin vitroのレベルで殺細胞効果の検討を行った。 2)ヌードーウス(Balb/c)植固型腫瘍(ヒトSCC, ACC)における抗腫瘍効果についての検討 TiO2光触媒微粒子を癌組織内に効率良く導入するため金粒子にTiO2を担持させた遺伝銃の弾を製作した。さらにTiO2と抗癌剤を担持した粒子を遺伝子銃を用いて腫瘍組織内に打ち込んだ後、光照射を行って抗腫瘍効果についての検討を行った。 病理組織学的所見では、抗癌剤と光触媒酸化チタンTiO2付着金粒子は、ラット口腔粘膜上皮の角化層を中心に上皮全層と一部上皮下結合組織に抗癌剤と光触媒酸化チタンTiO2付着金粒子が黒褐色の微小粒子として観察された。また、抗癌剤と光触媒酸化チタンTiO2付着金粒子を挿入した後uv照射した群は、病理組織学的に変化は認められなかった。抗癌剤と光触媒酸化チタンTiO2付着金粒子を挿入した後HV照射しなかった群は、病理組織学的にも1-2日後に上皮下に水泡形成所見や上皮欠損(潰瘍所見)が観察できた。本結果より光触媒酸化チタン(TiO2)はUV照射On-Offにより抗癌剤等の薬剤の組織感受性を調整するモデル的効果発揮が期待できることが示唆された。現在、病変部(腫瘍組織)における抗癌剤等の薬剤の局所的効果についての検討を行った。 また薬剤の効果を光照射のよりOn-Offコントロールすることで治療効果の判定に関する実験についても開始した。 2.TiO2光触媒反応による防菌効果についての検討 歯科齲蝕治療時に使用するレジン材にTiO2を添加し、齲蝕に対する防菌効果を検討した。 さらに歯周疾患をはじめとした口腔感染症に対する防菌効果とその実用化にむけての実験的検討を継続している。
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