ビスフェノールA(以下BPA)を母体に投与して、胎生期曝露(妊娠13〜19日)と胎生期から哺乳期を通じた曝露(胎生13-19日と生後3-20日)による新生仔の歯や顎骨および性腺の発生・成長に及ぼす影響を検討し以下の結果を得た。 1.胎生期曝露 (1)新生仔(生後13日)の体重は、全ての群でオスがメスより大きかったが、高投与量のBPAは体重の性差をなくする傾向が認められた。また、BPAの体重増加に対する抑制的影響はオスでより大きいことが認められた。 (2)高投与量のBPAは、精巣重量の増加に対して抑制的影響を及ぼすことが認められた。 (3)高投与量のBPAは精子細胞数を減少させることが認められた。 (4)下顎骨長は対照群が最も大きく、100mg群と500mg群が同じ値で最も小さかった。 (5)第一臼歯歯胚の体積は10mg群が最も大きく、100mg群が最も小さかった。 2.胎生期および哺乳期曝露 (1)新生仔(生後21日目)の体重は対照群ではオスが大きく、実験群では50mg群以外のすべての群でメスが大きな値を示した。しかし、その差は有意ではなかった。 (2)精巣重量は、10mg群が最も大きく500mg群が最も小さかった。また、精子細胞の数は10mg群が最も多く500mg群が最も少なかった。 (3)頭部軟X線像では、顕著な成長障害や石灰化異常は認められなかった。また、左側下顎骨長は、雌雄とも10mg群が最も大きく、次いで50mg群、対照群、100mg群の順に大きく、500mg群が最も小さかった。しかし、いずれの群においても有意な性差は認められなかったが、100mg群と500mg群においてメスがオスより大きい値を示した。 (4)第一臼歯歯胚の体積は、500mg群を除いた他の全ての群でオスがメスより有意に大きい値を示した。 本実験では、10mg群と50mg群がいくつかの項目において対照群より優位な値を示し、胎生期のみの曝露とは異なるBPAの影響が認められた。
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