研究概要 |
歯周病の原因菌のひとつとされる細菌Porphyromonas gingivalisの多剤排出ポンプについて、以下のような事柄が明らかになった。すなわち、 1.グラム陰性偏性嫌気性桿菌Porphyromonas gingivalisにはRND型多剤排出ポンプをコードする遺伝子群が2つ存在する(xepCAB、xepEFG)。そのうちのひとつXepCABは、生菌で実際に機能し種々の構造的に共通性がない薬剤(ノルフロキサシン、アクリフラビン、臭化エチジウム、SDSなど)を能動的に排出している。さらに、基質には複雑な構造をした薬剤のみならず、重金属イオンである銀イオンも含まれる。XepCABは偏性嫌気性菌におけるRND型多剤排出ポンプとしては、初めての例である。 2.能動排出のエネルギーはプロトンの電気化学ポテンシャルに依存している。 3.多剤排出ポンプを持つことから、しかも現在の歯周病の治療薬であるミノサイクリンもこのポンプの基質となることから、将来、耐性菌が生じる可能性が示唆される。 4.コンピュータ解析によるとP. gingivalisは二成分制御系を6つ持っていると推定される。それらのうちのふたつ(∫imS∫imRとgppXについては、XepCABの発現制御への関与を示唆するデータは得られなかった。残りの4つの制御系については、その機能は不明である。 5.P. gingivalisに存圧するMATE型多剤排出ポンプのホモログのうち、PG1117およびPG0636は種々の薬剤や重金属イオンの排出に関与していなかった。 6.Pseudomonas aeruginosaのRND型多剤排出ポンプを阻害する薬剤MC-207,110は、XepCABも阻害し得ることを示唆した。
|