研究概要 |
本研究では、次のような2つの実験を行った。実験Iでは,発癌性ヘテロサイクリックアミンのMeIQxと細胞増殖因子の一つであるTGF-αを加えた培地でマウス下顎第一臼歯の歯胚を器官培養し、MeIQxとTGF-αがddYマウス培養歯胚の発育におよぼす影響を,7群,すなわちA群(対照),B群(DMSO),C群(TGF-α),D群(MeIQx : 5μg/ml),E群(MeiQx : 25μg/ml),F群(MeIQx : 5μg/ml+TGF-α),G群(MeIQx : 25μg/ml+TGF-α)において,組織学的および免疫組織化学的(PCNA法)に検索した。その結果、MeIQxとTGF-αは歯胚の歯原性上皮細胞の増殖には促進的に作用したことが考えられた。また、実験IIでは、発癌性ヘテロサイクリックアミンのTrp-P-2と細胞増殖因子のTGF-αがddYマウス培養歯胚の発育におよぼす影響を実験Iと同様にddyマウス胎仔より下顎第一臼歯の歯胚を摘出し、それらを7群に分け、A群(対照),B群(DMSO),C群(TGF-α : 0.2μg/ml),D群(Trp-P-2 : 1μg/ml),E群(Trp-P-2 : 5μg/ml),F群(Trp-P-2 : 1μg/ml+TGF-α : 0.2μg/ml),G群(Trp-P-2 : 5μg/ml+TGF-α : 0.2μg/ml)において,3日間器官培養を行った後に、それらの歯胚をヌードマウスの背部皮下組織中に移植し,組織学的および免疫組織化学的(PCNA法)に検索した。その結果、Trp-P-2とTGF-αを併用して用いると、歯原性上皮細胞の増殖が認められ、上皮の一部は角化し、また、角質変性による嚢胞様空隙の形成も認められた。以上、本研究の結果から、ヒトの歯原性嚢胞や歯原性腫瘍の発現においても、発癌物質や細胞増殖因子が関与していることが示唆されている。
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