ヒトパピローマウイルス(HPV)が、種々の前癌ならびに癌病変に検出されることから、HPV感染と発癌との関連が多くの注目を集めている。そこで本研究では、ハムスター口腔パピローマウイルス(HOPV)の発癌に関与している可能性を探るため、あらかじめハムスターにパピローマウイルスに対する免疫を獲得させた後、発癌実験を行い、前癌病変もしくは癌病変の形成の有無を解析した。この免疫方法としては、クローニングしたHOPVのゲノムのうち、ウイルス粒子の主要構造蛋白をコードする遺伝子Llを培養細胞に発現させ、ウイルス様粒子virus likeparticleを産生し、密度勾配法により精製して免疫用の抗原を作成し、この粒子をハムスターに皮下接種した。実験動物(雄性ゴールデンハムスター)は、対照群と免疫群および非免疫群の3群に分けた。対照群は、無処置とした。非免疫群は、発癌処置のみを行った。免疫群には2回の皮下接種を3週の間をおいて行い、その後発癌処置を行った。発癌処置は、4週間dimethyl benzanthracene(DMBA)を週3回、舌尖に塗布しその後創傷を加え、さらに.DMBA塗布を連続して、13日間行った。各群の動物は、発癌処置後、病理組織学的に検索した。免疫群では、対照群と同様に通常の舌組織を示し、体重増加も認められた。非免疫群では、体重減少と舌組織に前癌病変が認められた。また、発癌の早期(前癌病変)にすでにHOPVが舌上皮細胞に認められ、癌化に関連すると思われる遺伝子E6、E7の発現も観察された。これらの結果より、癌化にHOPVの関与が強く示唆され、特に遺伝子E6、E7が重要であり、この遺伝子によるDNAワクチンの有効性が示唆された。
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