研究概要 |
口腔領域の疣贅癌および乳頭腫における細胞動態とヒトパピローマウイルス(HPV)感染について検索した。口腔外科の生検および手術標本より得られた疣贅癌22例、乳頭腫18例そして過角化症12例のパラフィン切片のhistone H3をin situ hybridizationで、またp53 protein,cyclinD1,cyclin B1を免疫組織化学的に検出した。また、それぞれ病変のパラフィン切片からDNAを抽出し、良性型HPV (types of 6 and 11)と悪性型HPV (types of 16,18,31,33,52b and 58)の検出をPCR法にて行った。 その結果、過角化症ではhistone H3とp53の2重染色の陽性細胞はほとんどなく、cyclinD1とcyclin B1では陽性細胞を少しみとめられたが、基底細胞あるいは傍基底細胞に限局していた。そして、良性型HPVは約33%で陽性であったが、悪性型HPVの陽性例はほとんどなかった。乳頭腫においてhistone H3とp53の2重陽性細胞は33%と過角化症と比較して増加しており、またcyclinD1 77%とcyclin B1 89%は過角化症と比較して増加し、基底細胞から傍基底細胞にかけて陽性細胞がみられた。良性型HPVは陽性61%で、悪性型HPVの陽性11%も認められた。疣贅癌ではhistone H3とp53の2重染色の陽性細胞は77%と過角化症および乳頭腫と比較して増加して、またcyclinD1 91%およびcyclin B1 100%においても過角化症、乳頭腫と比較して増加しており、局在も基底細胞から傍基底細胞、有棘層にかけて広く陽性細胞がみとめられた。そして、良性型HPVの検出は71%で陽性、悪性型HPVは43%で陽性と、HPV感染の増加が認められた。これらの結果から疣贅癌と乳頭腫において細胞動態とHPV感染に相関関係が認められた。
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