研究概要 |
口腔粘膜をはじめとする顎口腔系諸器官は、常に細胞外からの温熱的・化学的ストレス刺激などにさらされている。そのような刺激から自らの細胞、組織ひいては個体を防御するために、細胞は様々なシグナル伝達経路を経てストレス応答を示す。今年度の研究によって、ストレスシグナル応答性MAPキナーゼ「ASK1」が細胞死(アポトーシス)のメカニズムのキー分子であることを示唆する知見を得た。すなわちASK1遺伝子ノックアウトマウスを作成したところ、初代培養細胞を用いた実験結果から、酸化ストレスおよびTNFシグナルにおいて、ASK1がアポトーシスに必須であることが証明され論文発表(EMBO Rep.VOl.2 222-228, 2001)すると共に、さらにその活性制御因子として新たにプロテインホスファターゼ「PP5」を同定した(EMBO J.Vol.20 6028-6036.2001)。 また最近、小胞体ストレスによってTRAF2が小胞体受容体であるIRE1に結合しJNKを活性化することに着目し、そのシグナル伝達過程においてASK1が必須であることを見いだすと共に、ある種の神経変性疾患において細胞内蓄積タンパク質が小胞体ストレスを誘導しIRE1-TRAF2-ASK1シグナル伝達経路が活性化されることを発見し、神経細胞死の分子メカニズムを明らかにしつつあり現在詳細な検討を行っている。今後は、これらのシグナル伝達経路における下流の標的遺伝子の同定を中心に研究をおこなうと同時に、小胞体ストレスという局面に着目した、口腔粘膜組織・硬組織の生と死のメカニズムならびに分化・再生機構の分子メカニズムを明らかにする。
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