研究概要 |
ラットは嘔吐はしないが、悪心はみられまた嘔吐する動物で見られると同様の自律現象は見られる。そこでラット自律現象を指標として嘔吐・悪心の中枢機構を解明するために本研究を計画した。催吐性刺激により一定の自律現象が見られるかどうかを明らかとするために催吐剤であるアポモルフィン由来の胃運動応答と顎下腺唾液分泌を解析した。 アポモルフィンの静注により用量依存性の胃運動抑制が生じ、引き続き緩やかな内圧上昇と収縮頻度の亢進が生じた。これらの特異的応答は最後野の吸引除去、ドンペリドンの静注や両側頸部迷走神経切除によりアポモルフィン由来の胃運動変化は見られなくなった。以上の結果から、アポモルフィン性の胃運動応答は最後野のD-2受容体にアポモルフィンが作用し、迷走神経を遠心路として発現すると結論づけられた。さらに、アポモルフィン静注で、著明な顎下腺唾液分泌が生じることが明らかとなった。この唾液分泌は同側鼓索神経切断、最後野吸引除去もしくはドンペリドンの静注により消失した。従って、この分泌応答は胃運動応答と同様最後野のD-2受容体にアポモルフィンが作用し副交感神経を遠心路として発現する応答であると考えられる。 さらに、ニューロキニン-1受容体拮抗薬(CP-99,994)の効果をアポモルフィン由来の胃内圧上昇を指標として検討した。3,10mg/kgの前投与でアポモルフィン由来の胃内圧上昇の出現を遅延、または消失させた。CP-99,994の延髄疑核周辺細胞への微量投与でも同じくアポモルフィン由来の胃内圧上昇の出現を消失させた。 これらの結果からラットを用いアポモルフィン由来の胃の特異的運動パターンと顎下腺唾液分泌を指標とした解析を行うことが可能になり、ラットでもイヌ等の嘔吐する動物と同様、悪心情報は延髄疑核周辺細胞へニューロキニン-1受容体を介して伝達されていることが明らかとなった。
|