研究概要 |
Cyclic ADP-ribose (cADPR)はCa^<2+>動員作用を有するリアノジン受容体(RyR)の新しいメッセンジャーとして注目されているが,その作用発現様式,生合成・分解系,生理的役割等不明な点が多い.本研究は,cADPRを介する情報伝達系の分子機構とその生理的意義の解明を目的とする.すでに,平成13年度においては,cADPRがFKBPに作用してCa^<2+>動員作用を引き起す可能性を示した.本年度は,これらの点を更に深化させると共にcADPRの生理的役割について検討した. cADPRは副腎クロマフィン細胞でFKBP12/12.6に作用してCa^<2+>動員作用を引き起すことを中和抗体を用いて明らかにした. 唾液腺細胞でacetylcholine (ACh)刺激による細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の持続した上昇はphospholipase C阻害薬よりはむしろTMB-8やdantrolene (RyR阻害薬)で強く抑制されること,caffeine (RyR活性化)の前処置によってもCa^<2+>流入は阻害されることを見いだした.好中球でもcADPRはCa^<2+>作用を認めた.cADPR阻害薬はfMLP刺激による[Ca^<2+>]iの持続した上昇を抑制したがFK506は影響しなかった.cADPRはRyRを介したCa^<2+>動員に基づくCa^<2+>流入機構の活性化に重要な役割を果たすことを明らかにするとともに,組織により作用様式が異なる可能性が示された. cADPR阻害薬は好中球遊走作用を抑制した.唾液腺分泌におけるcADPRの機能について検討中である. 本年度は唾液腺細胞や好中球等非興奮性細胞の[Ca^<2+>]i動態におけるcADPRの役割に研究が発展したが,FKBP12/12.6によるRyRチャネル調節の分子機構とこれら分子間相互作用に及ぼすcADPRの関連性については検討中である.
|