我々は、まず、ヒト耳下腺由来細胞HSYを用いSyntaxin-4の細胞内輸送におけるMunc18cの役割を明らかにした。次に、Adeno-X expression Systemを用い、1本のmRNAからVAMP-2-FLAGとGFPが同時に発現するアデノウイルス・ベクター発現系を構築した。このウイルスをprimaryのラット耳下腺細胞、および、ラット顎下腺にin vivoで導入し、生きた細胞でGFPの蛍光を共焦点レーザー顕微鏡下で観察した。また、固定後、抗FLAG抗体による免疫組織化学でVAMP-2-FLAGの発現部位を観察した。これまでに得られた研究成果を以下に示す。 (1)t-SNAREであるGFP-Syntaxin-4をHSY細胞に発現したところ未同定の膜構造を形成し、細胞膜への輸送・発現は見られなかった。そこで、Syntaxin-4結合タンパク質であるMunc18cを共発現したところ、Syntaxin-4とVAMP-2やSNAP-23との結合は抑制され、細胞膜への輸送・発現が認められた。この結果は、Munc18cがSyntaxin-4を封鎖状態に保持することで他のタンパク質との早熟な結合を抑制し、Syntaxin-4を細胞膜まで確実に輸送するシャペロン様の役割を担っていることを示唆している。 (2)コラゲナーゼ消化法で調製したprimaryの耳下腺細胞にアデノウイルス・ベクターを用いVAMP-2-FLAGとGFPを共発現させたところ、多数の細胞にGFP蛍光が観察され、免疫組織化学により細胞内膜系にVAMP-2-FLAGの発現が確認された。 (3)アデノウイルスをラット顎下腺に直接注入し、48時間後に唾液腺を固定、免疫組織化学的に観察したところ、VAMP-2-FLAGは主として顎下腺線条部導管に発現し、細胞の基底側小胞体に強い反応が認められた。腺房部細胞での発現や、分泌顆粒膜上への局在は認められなかった。
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