胎仔唾液腺は、branching morphogenesis(分枝形態形成)と呼ばれる発達過程を経て成長する。本研究では、唾液腺の分枝形態形成を制御する因子としてEGFおよびインテグリンに着目し、両分子の機能解明を目的として実験を行っている。本年度実施された研究から以下のような結論が得られた。 1)培養胎仔顎下腺にEGF受容体キナーゼの特異的阻害剤(RG50864)を添加すると著しい分枝形成の阻害が認められた。 2)ERK(古典的MAPK)の活性化を阻害するPD98059を添加した場合も分枝形成が抑制された。 3)PLCγ1およびPI3Kの阻害剤であるU73122(PLCγ1阻害剤)およびLY294002(PI3K阻害剤)を添加すると、U73122を添加した場合にのみ分枝形成の阻害が認められた。 4)Protein kinase C(PKC)の阻害剤であるCalphostin Cを培養胎仔顎下腺に添加すると分枝形成は促進することがわかった。 5)培養顎下腺にEGFを作用させるとPKCαの活性が上昇することがわかった。しかし、PKCεおよびPKCδは逆に活性が減少した。 以上の結果、EGFの有する分枝形態形成促進作用は、上述した酵素群により伝達されていると考えられた。また、酵素活性の変化はEGF受容体の活性化を介して誘導されていることが示唆された。現在、唾液腺分枝形態形成における上記酵素の役割を解明するため、さらに詳細に検討を行っている。
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