血管内皮増殖因子の破骨細胞誘導・活性化に及ぼす影響に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671950
• 研究機関: 昭和大学
• 研究代表者: 山田 庄司 昭和大学, 歯学部, 教授 (00111617)
• 研究分担者: 坂井 信宏 昭和大学, 歯学部, 助手 (90286849) ; 鈴木 恵子 昭和大学, 歯学部, 講師 (50119187) ; 天野 均 昭和大学, 歯学部, 講師 (90212571)
• キーワード: VEGF / CSF-1 / RANKL / 破骨細胞 / キナーゼ活性 / VEGF受容体1型 / Flt-1 / Fcキメラ / op / opマウス

研究概要

本年度は研究の中間年なので、まずVEGFがCSF-1の代替因子となる理由を詳細に検索した。
(1)各種のVEGFantagonist, CSF-1 antagonistが破骨細胞誘導系に及ぼす影響に関する実験
VEGFによる破骨細胞形成が誘導の阻害実験により細胞内ドメインを持たないデコイレセプターとなることでVEGF受容体からのシグナル伝達を阻害するFlt-1/Fcキメラ、VEGFの作用を中和するanti-VEGF抗体及びCSF-1受容体の中和抗体を添加した群について検討を加える。Flt-1/Fcキメラでは完全には阻害できなかったが、anti-VEGF抗体により破骨細胞誘導は完全に阻害された。CSF-1受容体の中和抗体ではVEGFの作用はまったく阻害できなかった。VEGFの作用の主な経路はVEGF1型受容体を介するが、別の経路もある可能性は否定できなかった。
(2)op/opマウスの脾細胞を用いた破骨細胞誘導系に関する実験
未熟なマクロファージ・単球系は自身でリガンドであるCSF-1を産生する可能性があり、正常の造血系細胞を使用した場合、内因性のCSF-1産生を完全に否定することが出来ない。そこでVEGF+RANKLによる破骨細胞誘導系をop/opマウスの脾細胞を使用して行なった。その結果破骨細胞は、op/opマウスからも同様に誘導された。VEGFによる破骨細胞誘導には、CSF-1の関連がないことが証明された。
(3)Flt-1 kinase domain knock outマウス(TK-/-)の造血系細胞を使ったin vitro実験
VEGFの細胞内情報伝達は、細胞内のチロシン燐酸化ドメインが重要であると報告されているので、チロシン燐酸化部位の欠如したTK-/-マウスから採取した骨髄細胞を用い、VEGFとRANKL共添加することで破骨細胞誘導が完全に阻害されるか否かを検索した。TK-/-の脾細胞を使用した場合は、破骨細胞誘導能は減少した。このことからキナーゼドメインは破骨細胞分化に重要な役割があると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] 信川真智子, 山田庄司, 天野均: "破骨細胞形成に及ぼすジクロフェナックナトリウムの影響"歯科薬物療法. 20・3(印刷中).
• [文献書誌] Suzuki K, Yamada S.: "Ascites Sarcoma 180 secretes a soluble factor(s) which inhibits mineralized formation in vitro"歯科薬物療法. 20・3(印刷中).
• [文献書誌] Suzuki S., Zhu B., Sodeck J., et al.: "Migration and resorptive activity is impaired in osteoclasts derived from OPN-/-and CD44-/-mice"J.Bone Miner.Res.. 17(印刷中).
• [文献書誌] Hisamitsu T, Amano H, Yamada S, Momose K, et al.: "A mechanism of Ca^<2+> release from Ca^<2+> stores coupling to the Na^+/Ca^<2+> exchanger in cultured smooth muscle cells"Life Science. 69・23. 2775-2787 (2001)
• [文献書誌] 天野均, 鈴木恵子, 山田庄司: "破骨細胞におけるNa^+/Ca^<2+>交換体(NCX)の役割に関する研究"昭歯誌. 21・1. 82-85 (2001)
• [文献書誌] Kikuchi H., Amano H., Yamada S.: "Putative role of basement membrane for dentinogenesis in the mesenchyme of murine dental papillae in vitro"Cell Tissue Res.. 303・1. 93-107 (2001)