研究概要 |
二成分制御系のレスポンスレギュレータホモローグであるGcrRがどうシグナルに応答して,どのようなメカニズムによりGbpC蛋白発現を調節しているのか検討するため,GcrRの「センサー蛋白」からのシグナル受容サイトと考えられる53番目に位置するアスパラギン酸(D53)をアラニンに変え,更にこの構築フラグメントをGbp発現がβガラクトシダーゼ活性でモニターできるS.mutansの変異株SCSR6株に導入して,今までの実験結果からGbpC発現を誘導することが分かっている亜致死濃度の抗生物質やキシリトールの添加でGbpC発現の応答がどうなるかを調べた.その結果は,このアミノ酸置換変異導入株におけるGbpC発現の応答は,野生型のgcrR遺伝子導入変異株とほとんど変わらなかった.これらのことから,筆者はGcrR蛋白は非リン酸化型が負の調節をしていると現在考えている.また,GbpC蛋白質はそのC末端のアミノ酸部分で細胞壁に結合した状態で存在しているものと考えていることを昨年度の報告に記したが,この分画法により正しく分画されているかを,細胞内タンパク質マーカーであるHsp70の抗体を用いて確認した.更にこの細胞壁に発現しているGbpC蛋白により,S.mutansの細胞がプラーク中のグルカンに結合できるか否かを推定するモデルとして,固相表面に存在するグルカンにS.mutansの細胞がGbpC蛋白質を介して結合するか否かを,今までの実験で既に得られているGbpC蛋白質欠失変異株や強発現変異株を供試して,Biacore装置を用いて調べた.欠失変異株と野生株の比較では明らかにGbpC蛋白発現に応じた結合が観察された.しかし,強発現変異株においてはその発現量に応じた多量の結合は観察されなかった.
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