研究概要 |
昨年度に行ったGcrRについての研究の結果,GcrRタンパクのgbpC発現に対する作用形式が二成分制御系(2CS)の典型的な調節形式ではないと考えられた.しかし,S. mutansのゲノムシーケンスデータベースから13組の2CSが検出されている.そこで,それらのうちGcrRタンパクと最も相同性の高い4番と8番のレスポンスレギュレータについてこれらの失活変異を,Gbp発現がβガラクトシダーゼ活性でモニターできる我々のS. mutans変異株に導入して,GbpC発現を調べたが,これには全く影響がなかった.従って,これらのクロストークによる制御の可能性はないと結論された.また,昨年度のGbpCタンパク質の分画を試みた実験から,細胞内タンパク質であるHsp60や,元来細胞内に存在するはずのグリコーゲンホスフォリラーゼ,エノラーゼなど糖代謝に関連する酵素タンパク質などが,細胞壁に存在することが示唆された.タンパク質の局在性を調べる一般的方法の一つである大腸菌のアルカリフォスファターゼ遺伝子phoAを用い,グリコーゲンホスフォリラーゼが細胞壁にも検出されることを確認した.また,その細胞壁画分にはゲノムデータベースから同定できないタンパクバンドが認められ,この存在は低温凝集という現象と相関することが分かったので,最近Lampeにより開発されたインビトロトランスポジション法によるランダム変異導入により,低温凝集を示さない変異株をスクリーニングすることにより,その同定を試みた.その結果,分子量50kDaのLPXTGモチーフを持つゲノムデータベースにはないS. mutansの新奇細胞壁タンパクをコードする遺伝子が見いだされた.この遺伝子は一部のS. mutans株にのみ保存されているようである.
|