昨年度は、急性純窒素曝露による呼吸運動停止と横隔膜筋電図活動消失時にも、顎二腹筋筋電図(dEMG)にtonicとphasic dischargeが出現することをペントバルビタール麻酔下の生後9-12日齢ラットで確認した。 本年度は、このdEMG dischargesを、麻酔下の5、10、16、23日齢(以下D5、D10、D16、D23)ラットを対象に検討した。尚、両頚部迷走神経切断の影響も調べたが、切断群でも非切断群と同様にdEMG dischargeが認められたので、以下には両群(同数)を合わせた結果を示す。 D5では20例中19例(以下19/20)にphasic dischargeが認められ、tonic dischargeを伴った例は2/20だった。DlOもphasic dischargeが17/20に対しtonic dischargeは4/20だった。しかし、D16になるとtonic dischargeが20/22に増加し、一方phasic dischargeを伴ったのは1/22だった。D23でもtonic dischargeが16/20に対しphasic dischargeは4/20だった。尚、D10-D23では両discharges(-)例も10〜18%存在した。更に離乳期前後(D16とD23)で高率に見られたtonic dischargeについて、MK-801(NMDA glutamate channel antagonist)を腹腔内投与し検討したが、その出現率は減少しなかった。 以上から、離乳期までの幼若ラットでは、1)急性純窒素曝露時の無呼吸期にみられるdEMG活動は迷走神経を切断しても発現し、2)そのdischarge patternは日齢で変化するが、3)離乳期の.tonic discharge発現にNMDAが果たす役割は大きくない、可能性が示唆された。
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