研究概要 |
我々は、乳幼児期の動物が無酸素状態に陥った際に横隔膜活動とともに顎二腹筋活動が検出されるか調べた。生後5、10、16、24日齢のラットを麻酔し、顎二腹筋と横隔膜両筋電図の測定を100%窒素暴露による無酸素環境下で行った。 本年度は昨年度までのペントバルビタール麻酔下実験について例数を追加し、成果は第45回歯科基礎医学会学術大会でポスター発表した(歯基礎誌45巻5号抄録集、2003;146(352))。さらに、ケタミン/キシラジン麻酔ラットにおける測定を加え、平成13、14年度の実験結果と合わせて以下の結果を得た。 1.空気環境下、顎二腹筋筋電図(dEMG)は横隔膜筋電図(diaEMG)ほど明確ではないが認められ、両者はほぼ同期して出現した。 2.無酸素下では先ずdiaEMG活動の抑制が認められ(Phase 1と呼ぶ)、その間にdEMG活動が検出された。このdEMG活動のパターンは日齢で異なり、5、10日齢では散発的な活動(sporadic activity)、16、24日齢では持続的な活動(tonic activity)を示した。さらに無酸素が持続すると、diaEMGとdEMG活動が同期して出現し(Phase 2と呼ぶ)、最終的に全活動は停止した(terminal apnea)。 3.これらの特徴的な筋電図活動は、両側頚部迷走神経切断ラット(全日齢)、N-methyl-D-aspartate (NMDA) receptor antagonist, MK-801投与ラット(16、24日齢)(以上、ペントバルビタール麻酔下)、さらにケタミン/キシラジン麻酔ラット(全日齢)にも認められた。 結論として、無酸素暴露の初期の一時的にdiaEMG活動が抑制される時期にdEMG活動が検出され、その活動は日齢、麻酔薬の違い、迷走神経切断、およびMK-801投与の有無に関わらず起こる事が示唆された。
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