【目的】関節頭と協調運動を行う円板の運動を解析することが重要である。そこで、本研究ではウレタン麻酔下のウサギを用いて、皮質咀嚼野の連続電気刺激で誘発されるリズミカルな下顎運動中の円板の運動をビデオ撮影した。円板の動きは、同時記録した咀嚼筋筋電図と切歯点の運動との対応関係において解析した。【方法】側頭骨関節突起外側部半分を削除して、円板を直視できる状態で高速ビデオカメラ(時間分解能:8ms、125画像/秒)にて円板の運動を側方から撮影した。皮質咀嚼野の刺激部位を選択することにより、大きな側方運動を伴うグラインドタイプの運動と、上下運動を主体としたチョッパータイプの2種類の運動を誘発した。また、刺激部位を左右入れ替えることにより、観察関節が作業側になった場合と、非作業側になった場合の記録を行った。切歯点運動を参考に、1咀嚼周期中に9箇所の観測点を設定し、各時点での円板の静止画像を抽出した。静止画像上の円板中央部にマーキングポイントをコンピュータ描画ソフトにて描画し、この点の移動軌跡としての円板の矢状面での動きを解析した。【結果、結論】チョッパ運動では、円板の運動は前下方と後上方を往復する単純な軌跡を描いたが、グラインドタイプの運動では、円板が前方へ大きく移動する相が認められ、その軌跡は作業側と、非作業側の場合とで大きく異なった。円板が前方へ大きく移動する相は切歯点の運動でみた咬合相で認められたが、この時期は、作業側の咬筋ならびに頬骨下顎筋の活動時期にほぼ一致しており作業側と、非作業側の場合で大きな違いは見られなかった。しかし、円板が後方へ移動する相と咬筋ならびに頬骨下顎筋の活動時期との関係は、作業側と、非作業側の場合で異なった。作業側では、咬筋ならびに頬骨下顎筋の活動が消失した区間で、円板が後方へ移動するのに対し、非作業側では、円板と同側の咬筋ならびに頬骨下顎筋の咬合相での後半の活動と一部重複していた。
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