研究概要 |
平成13年度は、ステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーに属する核内転写調節因子であるPeroxisome proliferator activated receptor (PPAR)γが、広く知られている脂質代謝だけでなく自然免疫機能においても重要な機能的役割を担っている可能性を示した。すなわち、PPARγの内在性アゴニストである15-deoxy-Δ^<12,14>-prostaglandin J_2 (dPGJ_2)は、マクロファージ接着能、遊走能、および貪食能を有意に抑制した。一方、スーパーオキサイド産生能に対しては、dPGJ_2はPMAあるいはOPZで刺激した場合には有意な抑制を示したが、LPSで刺激した場合には産生能に著変を与えなかった。さらに、過酸化水素産生能に対しては、dPGJ_2はPMAあるいはOPZで刺激した場合に有意な抑制を示した。続いて、IL-10およびIL-12産生能に対しても、dPGJ_2はいずれも有意に抑制することを見出した。この平成13年度の成績は、dPGJ_2が新しく抗炎症薬として利用できる可能性が示唆している。一方、dPGJ_2は生体内においては、PGD_2を前駆物質として生合成されることから、平成14年度は、dPGJ_2によるマクロファージの自然免疫機能との相互作用の特異性を明らかにするために、PGD_2の受容体であるDP受容体のアゴニストであるBW245Cを用いて、マクロファージ各種機能に対する影響を検討した。BW245Cはマクロファージ遊走能に対しては、0.1から10μMにおいて抑制したが、貪食能に対しては10μMにおいてのみ抑制が認められた。また、BW245CはPMA刺激条件下でのスーパーオキサイド産生能を0.1から10μMにおいて抑制したのに対して、LPS刺激条件下でのNO産生能は10μMにおいてのみ抑制が見られた。さらに、炎症性サイトカインであるTNF-α産生能に対しては、LPS刺激条件下においてBW245Cは1および10μMにおいて増強効果を示した。上記成績により、PGD_2はその受容体を介してマクロファージ各種機能に影響を与えることが明らかとなった。
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