研究概要 |
タキキニンの生物活性調節機構を明らかにし、臨床応用することを日的に本実験を企画した。タキキニンの生物活性は数多くの精緻な方法で調節されており、非常に複雑である。タキキニンのC末ペンタペプチドのアミノ酸配列は非常に規則性に富んでいるという特徴をもつが、これがとても重要である。このペンタペプチドには活性は認められないが、NKレセプターと結合するためのアドレスになる部分であり、この規則性を壊すと活性は完全になくなる。天然ものはL型のアミノ酸からなるが、人工的にはD型のアミノ酸も置換できるし、D型に置換したものでも活性を高めることができる。従って、D型の置換体も目的とする置換体の候補のひとつになる可能性がある。次に、既に明らかにした最強の催唾作用を示すノナペプチドの繰り返し構造をもつ2倍体ペプチドには活性の持続性を延長する効果も、活性を亢進する効果も認められなかった。さらに、8位(ウンデカペプチド上での番号付け)と5および6位のアミノ酸の組合わせ方によりタキキニンの活性が大きく調節されているので、8位をFにし、6位をM(20個のアミノ酸の検索結果から最適のものを選択))に置換し、さらに4,3,2および1位のアミノ酸を色々なものに置換したウンデカペプチドを合成し、催唾活性の強いタキキニンをipあるいはi.v.投与で検索した。結果は予想どうりに6位のアミノ酸の重要性が再確認された。しかし、その後の研究で、天然のタキキニンのN末、1および2位のアミノ酸ははむしろ活性を抑制あるいは長い時間持続させる作用があることが明らかになり、検索を続けた。予算の都合から、統合化分子モデルツール用ソフト等は購入できなかったので、分子の設計、機能モチーフの解析・予測等を行うことはできなかった。タキキニンの生物活性は極めて精巧に調節されており、投与方法によっても異なるので、近代的機械・器具あるいはcomputer soft等を駆使し、完全な予測の基にペプチドを合成し、検索することにより、初期目的を完遂できると結論付けられた。
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