研究概要 |
BradykininとATPを手掌部投与により発生する疼痛に対する各種Caチャネル遮断薬の効果を検討し、神経に存在する電位依存性Caチャネルの鎮痛薬の作用点としての役割を検討した。各種Caチャネル遮断薬および受容体遮断薬は脊髄内に注射投与した。Bradykininによって誘発された疼痛反応は濃度依存的にNK1受容体遮断薬(L-703,606)によって抑制されたが、NMDA受容体遮断薬(D-AP6)は効果がなかった。一方、ATPによって誘発された疼痛反応はNMDA受容体遮断薬によって抑制されたが、NK1受容体遮断薬は効果がなかった。以上の結果から、bradykininはNK1受容体を介して、ATPはNMDA受容体を介して疼痛を引き起こすことがわかった。次に、2種の疼痛反応に対する各種電位依存性Caチャネル遮断薬の効果を検討したところ、Bradykininによって誘発された疼痛反応はω-conotoxin GVIAおよびcalciseptineによって有意に減弱したが、ω-agatoxin IVAは効果がなかった。一方、ATPによって誘発された疼痛反応はω-conotoxin GVIAおよびω-agatoxin IVAによって有意に減弱したが、calciseptineは効果がなかった。NK1受容体作用薬であるsubstance P(SP)およびNMDA受容体作用物質であるNMDAを脊髄内に注射投与することによっても疼痛反応が誘発された。SPによる疼痛反応はcalciseptineで減弱したが、ω-conotoxin GVIAは無効であった。また、NMDAによる疼痛反応はω-conotoxin GVIAおよびω-agatoxin IVA両者とも無効であった。以上の結果から、神経系に存在する電位依存性Caチャネルは疼痛信号の伝達に重要な役割を担っているが、疼痛の種類によって関与するCaチャネルが異なることが明らかとなり、鎮痛薬の作用点としてこれらCaチャネルを考えた場合、N型Caチャネルがより普遍的な可能性を持っていると考えられた。
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