研究概要 |
今年度は、昨年度までの研究成果を生かし、頸部リンパ節転移の可能性のある口腔顎顔面領域の悪性腫瘍症例を対象に、以下のプロトコールによるCT撮影を行った。装置は東芝社製Xvigor Realを使用した。(1)エックス線・ビーム厚3mmのnon-helical scanもしくはhelical scanによる3mm間隔の単純CT,(2)エックス線ビーム厚2mmもしくは3mmのhelical scan(テーブル移動速度3mm/管球回転)による、再構成間隔1mmの早期相造影CT,(3)原発巣及び転移リンパ節の存在の可能性のある領域における、造影剤投与後3分程度の遅延期相造影CT。早期相は300mgI/mlの非イオン性ヨード系造影剤を使用し、体重1kgあたり1〜1.5ml(全量で50〜100ml程度)を60秒で注入するように設定(1〜1.5ml/sec程度の注入速度)、造影剤自動注入機により経静脈的に投与し、注入開始後45秒前後の時点でスキャンを開始した。2003年1月〜12月の1年間において、本プロトコールによる撮影を施行した口腔顎顔面領域の悪性腫瘍症例の撮影件数は234件であった。このうち、これまでの本研究による成果としてのCT転移判定基準による転移所見が認められたのは25症例30件であった。 本年度は特に、本プロトコールにより頸部CTを撮影・診断する際に、転移リンパ節と誤診される可能性のある、上頸部の結節状正常解剖構造について詳細に検討した。これまで画像解剖学的に触れられていないもので、頸動脈分岐部の上方で内頸動脈に沿って上下に長く、中心にfatty densityの芯を有する紡錘形の結節状構造である。局在部位から上頸神経節が描出されている可能性が示唆された。その要旨は、第28回頭頸部腫瘍学会及び第45回日本歯科放射線学会にて報告する予定である。
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