研究概要 |
本研究では、胎生期の細胞増殖を制御するTGF-βと上皮細胞と間葉細胞相互の関係に種々の作用を有するHGF/SFが、二次口蓋突起癒合過程においてどの様に関与するかを、器官培養の系を用い培養液にHGF/SFやTGF-βの過剰添加或いはこれらのanti-senseを添加することにより遺伝子発現を抑制し、これら増殖因子の相互作用を明らかにする。 1,母マウスに膣栓を確認した時点を妊娠0日とし、妊娠11日より15日にかけて0.25日毎に麻酔下で母獣より胎児を摘出し、凍結切片或いはパラフィン切片を作製し、二次口蓋突起におけるHGF/SFとTGF-β3のm-RNAの発現を経時的に検討する。 2,摘出した胎児より一対の二次口蓋突起を実体顕微鏡下で無菌的に切り出して、軟寒天培地上の器官培養の系に移し培養を開始する。培養液にHGF/SFあるいはTGF-β3を添加、又はそれぞれのanti-senseを添加してm-RNAの発現を阻止し、他方の増殖因子の発現動態並びに癒合完了に至るか否かを検討する。 今年度の研究実績。HGF/SF m-RNAの発現は12日から二次口蓋突起の上皮層、間葉層のいずれにも認められ、13.5日にピークに達した。TGF-β3もほぼ同時期に主として間葉層に認められた。しかし、胎児組織の切片でのin situ hybridizationは組織が軟らかいため非特異的呈色反応が多いことが分かり、ホールマウントで現在進めている。in vitroでの一対の二次口蓋突起の器官培養は24時間の培養が可能で、これを更に延長して36時間以上培養できる条件を検討している。器官培養の系においても、上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン、間葉細胞のマーカーであるビメンチンの動態は、in vivoと殆ど変わらず、癒合の進行につれサイトケラチンが間葉層に拡散し、上皮-間葉変換が起こることが認められた。
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