昨年度より始めたラット口腔癌発癌実験によって生じた癌組織を材料として、まず、細胞内水輸送に関わる分子であるアクアポリンの癌組織内局在を観察した。その結果、正常口腔扁平上皮の基底層細胞見られたアクアポリン3の局在が、扁平上皮癌胞巣の最外層細胞においては消失していることを見いだし、この新知見を第44回歯科基礎医学会学術大会にて発表した。この知見を紙上発表すべく、論文作成準備中である。 他方、発癌実験で生じたラット口腔癌組織の培養を試みた。ラット舌癌組織・ラット口蓋癌組織を採取して培養したところ、培養開始から4ないし5ヵ月後に、2個の口蓋癌組織より、上皮様細胞のみからなる細胞集団が各々の組織より一つずつ、計2種得られた。そのうちの一つはヒーラ細胞様の敷石状配列をとりながら増殖しており、もう一つは角化傾向をうかがわせるような増殖様式を示していた。なお、クリーンベンチの改修のために、増殖したそれら細胞は液体窒素中に凍結保存した。 さらに、顎骨吸収を伴わない舌癌に由来する培養細胞の特性と、顎骨破壊をきたす口蓋癌由来の培養細胞との特性を比較して、口腔癌増殖に伴う顎骨破壊との関連を解明するために、ラットと4ニトロキノリン1オキサイドとを用いる舌癌誘発実験を今年度秋より開始した。すでに実験開始から20週が経過し、舌癌発生の兆侯が見いだされている。 今後は、得られた口蓋癌由来培養細胞の株化を行い、株化細胞と脾臓細胞とを、ハイドロオキシアパタイト上で共存培養して、口腔癌と破骨細胞関連因子との関連を明らかにしていく予定である。
|