H13年度は、より効果的なGVTを誘導する機序を解明する前段階として、局所でのGVHDモデルの作製とエフェクター細胞の検討を中心に行った。局所GVHDの発症機序の解明は、癌組織に特異的な細胞傷害機構の誘導に重要である。結果として、1)急性GVHD脾細胞の舌投与により、局所GVHDを発症させた。病変発症は、CD8陽性細胞の上皮内および上皮下結合組織での浸潤により判定した。2)イニシエーターとして、マクロファージが関与することを明らかにした。すなわち、(1)マクロファージを除去した脾細胞の投与では、病変の判定基準とされるCD8細胞の浸潤が認められなかった。(2)病変部には、マクロファージ産生のmonocyte chemotactic protein-1(MCP-1)mRNAの発現が、RT-PCRにより検出された。さらに、(3)MCP-1抗体の前投与により、病変発症が抑制された。以上のことから、局所GVHDの発症には、MCP-1を介したマクロファージが発症エフェクター細胞として関与することが考えられた(第38回日本消化器免疫学会総会にて口演発表;消化器と免疫38、2001に掲載)。局所GVHDの発症にケモカインであるMCP-1の関与が認められたことは、今後のGVTとGVHDの発症機序の相違点を検索にあたっても、興味あるファクターの一つであると考える。担癌動物の作製に関しては、現在までのところ腫瘍細胞の生着および増殖に再現性が得られていない。これらは、H14年度への課題とする。
|