平成15年度は、平成l4年度に得られたGVT効果をより確実にすることを目的とした。 平成14年度の結果から明らかになった特徴の一つは、GVTの誘導時期により効果に違いがあるということであった。すなわち、効果的なGVT反応を誘導するには、全身的および口腔粘膜でのGVHD病変が著明となる201日目に、悪性黒色腫(MM)細胞(B16)を舌に播種するモデルで63.7%の抑制率を認めた。また、GVHD誘導10日(GVHD反応の特徴である脾腫を認める)では、33.9%の抑制効果である.これらの結果から、さらに腫瘍抑制の効果を向上させるためには、in vivoでの腫瘍細胞の動態を詳細に検索する必要性が生じた.そこで、ヒト悪性黒色腫の予後マーカーとされる糖鎖に関してレクチン組織化学的に検索した。培養細胞(B16)ではHPAあるいはPNAの染色性が認められたが、舌のMMではこれらのレクチンに対する反応性が消失していた。染色性の消失機序を明らかにするために、ノイラミニダーゼ処理をした後、レクチンを染色を行った。前処理により、HPAおよびPNA反応性が回復した。この結果から、in vivoでの担癌状態では細胞表面糖鎖の末端にシアル酸が付加されたと推測される。すなわち、生体内でのMM細胞は、細胞内に存在すると考えられるsialyltrasferaseが活性化され、細胞表面糖鎖の末端にシアル酸が付加したものと思われる。シアル酸の付加については、多くの悪性腫瘍の転移能に関与するとの報告もあり、本研究のMMモデルでの顎下リンパ節への転移との関連性が示唆される。 したがって、現在までの抑制率をさらに向上させるためには、腫瘍細胞側の分子修飾への対応も必要であることが明らかとなった。
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