研究成果は、1)口腔粘膜局所でのGVH反応の発症にマクロファージ関連のケモカインであるMCP-1の関与、2)悪性黒色腫(MM)の担癌モデルにおけるGVT効果は、GVTの誘導時期により異なること、および3)GVT効果はMM細胞の表面糖鎖構造の修飾により影響を受けるの3点が成果として挙げられる。今回の一連の検索での問題点は、GVHD反応を全身的に誘導することにより、口腔癌を細胞傷害性T細胞(CTL)により攻撃する可能性は得ることができた。しかしながら、現在までのところ全身性に進行しているGVHD反応を抑制して、口腔癌のみに特異的に抗腫瘍効果を挙げることはできなかった。その対応策として、1)の局所GVH反応でのエフェクター細胞の検索は、癌局所でCTLを誘導するという点では意義があると考える。すなわち、CTLを癌細胞に特異的に遊走させるためには、MCP-1が関与する可能性を示唆した。さらに、特異的なGVT反応を誘導するためには、担癌状態での癌細胞の分子修飾に対処しなくてはならない、ということを3)で示している。とくに、CTLの認識機構に関連する細胞表面糖鎖構造がsialyltransferaseの活性化により末端にシアル酸が付加する可能性を組織化学的に検討した。この点は、癌抗原のマスキングを含めて、癌細胞の免疫回避機構に繋がるものである。 以上の結果から、口腔癌へのより効果的なGVT反応を誘導するには、in vivoの担癌状態で癌細胞の分子修飾に対応したCTLの確実な癌細胞への遊走が必要であることが示唆された。
|