研究課題
薄膜HAコーティングインプラント体(HA)および純チタン単体インプラント(Ti)をビーグル成犬の顎骨に植立し、界面部での骨新生過程ならびに骨融合形態の経時的変化を組織標本およびマイクロCTを使用して観察した。埋入のためのインプラント床を設定し、上方2mmはキャップを装着するためのスペース、残り6mmのうち下方4mmをインプラント体が実際に顎骨に固定される部分とした。周囲への線維性結合組織の迷入を防止するために、吸収性膜によってインプラント体上面を被覆した。インプラントを埋入してから3週から24週にかけて経時的に標本を作製した。顕微鏡下における観察結果の代表例として、埋入後3週後症例での新生骨添加は、HAではインプラント床上方1/2の母床骨表面のみでなくHA膜表面でも認められた。Tiでは母床骨表面のみで、インプラント体表面では線維性結合組織が進入していた。インプラント床下方1/2では両者間に差異はなかった。埋入後5週後症例においては、HAでは、インプラント床上方1/2の骨空隙が母床骨とHA表面に添加した新生骨によって完全に満たされ、母床骨とインプラント体は新生骨により確実な骨との骨結合(融合)が得られていた。一方、Tiでは、この空隙は新生骨に満たされておらず、線維性結合組織が介在していた。マイクロCT所見の代表例では、埋入後3週後症例でアーチファクトの発生が危倶されたが、骨とインプラント体との境界を立体的に捉えることができた。両インプラントともに、過大に形成されたインプラント床上方1/2の骨空隙部では骨欠損が認められたが、Tiでその傾向が強かった。HAの骨髄腔内では、骨梁の形成が認められ、それらは皮質骨と連絡していた。一方、Tiでは、骨髄腔内において、インプラント周囲に骨梁の形成はなく、皮質骨からわずかに形成されたことを示唆するようなインプラント方向へ延びる形成途中の骨梁が認められるのみにとどまった。
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