従来の方法で既知の全ての遺伝子に対する発現を解析するには時間とコストがかかりすぎる。ましてや口腔内細菌に対するDNAアレイが商業ベースで発売されることは期待できない。従って多くの歯周病関連細菌の病原因子発現量を一度にモニター可能なDNAチップをカスタムメイドで開発した。歯周病関連細菌であるPorphyromonas gingivalis遺伝子を対象としてDNAマイクロアレイを作製した後、ハイブリダイゼーションや洗浄条件等の方法を確立したのち、様々な解析方法も検討した。その結果、Total RNAに比較しmRNAをstart materialとして使用した場合にはシグナル強度が低い遺伝子発現が捕らえられるようになった。またnormalizationには内部標準である16S rRNAよりも外部標準として一定量の標識ヒト由来遺伝子を使用した方が、Real-time PCRの結果とよくマッチすることが判明した。P.gingivalisに以下のような様々な環境変化を与えそのtranscriptome profilingを解析した(1.各増殖期で特異的に変動する遺伝子の検索、2.ヘミン制限下で変動する遺伝子の検索、3.酸化ストレス下で変動する遺伝子の検索)。その結果、マイクロアレイ解析は様々な病原性の発現を同時に検出できるだけでなく、今まで各々独立して報告されてきた病原因子間のつながりにもその威力を発揮するものと期待された。また、歯周ポケット内の細菌の活動度をモニターすることができる可能性を秘めていた。
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