P.gingivalisの口腔内定着因子として挙げられる赤血球凝集因子と共凝集因子についてリガンド相互作用に基づいた解析を行った。はじめに、データーベース解析を十分に行い、リガンド結合に関わる分子内ドメインを探すことが必要と考え、P.gingivalis赤血球凝集因子分子、共凝集因子について、データーベースと照らし合わせ、モチーフ検索、ブロック検索を行った。 Influenza virusの赤血球凝集因子とP.gingivalisの赤血球凝集因子の一次構造から、活性と構造の共通性の検索を行った結果、P.gingivalis赤血球凝集因子の機能部位配列と相同する部位が、influenza virusにも存在する配列であることを見いだした。患者血液からP.gingivalis赤血球凝集因子に対する抗体を不死化して単離した所、本抗体が結合する部位の相同性に基づいた推測通り、influenza virusに交差反応のあることが判明した。 口腔内定着に関わる共凝集因子の分子構造的に解明し、他の分子と相互作用する部位の解析を試みた。P.gingivalisの共凝集因子は多機能分子であり、ヘミン結合タンパク質であることが判明した。ヘミン結合タンパク質の真の役割を考慮し、ヘミン分子の酸化還元能や、酸素包含能の可能性を示した。さらに、このヘミン結合タンパク質のヘミン結合機構がシステイン残基に基づくものであることを抗体結合実験から証明した。実験に当たって、分子内のシステインをセリンに変換したリコンビナントタンパク質を作製し、本分子中に存在する4つのシステイン残基のうち、どのシステイン残基がヘミン結合に関与するかを検討した。そのうち2つはチオレドキシンの活性中心をなしており、酸化還元機構との関連を推測した。
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