研究概要 |
目的:未分化間葉系株化細胞(C2C12細胞)の細胞分化に及ぽすenamel matrix derivative(EMD)の影響を,筋細胞,骨芽細胞,軟骨細胞および脂肪細胞の分化マーカーとなるタンパクあるいは遺伝子発現を調べることによって明らかにすること。 方法:C2C12細胞は,低血清下で培養すると筋細胞あるいは脂肪細胞へ分化することが知られている。細胞を継代培養する際には15% fetal bovine serum(FBS)を含むDulbecco's modified Eagle medium(DMEM)培地を用い,細胞分化への影響を調べる際には,5% FBSを含むDMEM培地(defferential medium : DM培地)を用いた。筋芽細胞のマーカーとなるtype II myosin heavy chainとdesminのタンパク発現は,DM培地にEMDを添加あるいは無添加の条件下で7日間培養後に細胞を免疫染色することによって調べた。細胞増殖とアルカリホスファターゼ(ALPase)活性は,DM培地に種々の濃度のEMDを添加して14日間培養し,経日的に測定して調べた。筋芽細胞の分化マーカー(DesminとMyoD),脂肪細胞の分化マーカー(lipoprotein lipase),軟骨細胞の分化マーカー(type X collagen)および骨芽細胞の分化マーカー(骨型ALPaseとosteocalcin)の遺伝子発現は,DM培地に種々の濃度のEMDを添加して3および7日間培養後,RNAを抽出して半定量的RT-PCR法によってmRNAレベルで調べた。 結果:C2C12細胞はDM培地のみで培養するとmyotubeの形成,およびdesminとtype II myoisin heavy chainsのタンパク発現が認められたが,DM培地にEMDを添加して培養するとそれらの形成およびタンパク発現は消失した。C2C12細胞の増殖およびALPase活性は,EMD添加によって顕著に増加した。C2C12細胞のDesmin, MyoDおよびlipoprotein lipaseの遺伝子発現は,いずれもEMD添加によって著しく減少した。一方,骨型ALPase, osteocalcinおよびtype X collagenの遺伝子発現は,END添加によって有意に上昇した。 結論:EMDはC2C12細胞の筋芽細胞および脂肪細胞への分化を抑制し,骨芽細胞あるいは軟骨細胞への分化を促進することが示唆された。
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