研究概要 |
唾液腺およびその周囲に発現する疾患の診断には、多くのシーケンスが利用されているが、その選択には多くの経験やMRIの知識が要求される.唾液腺疾患に適した撮像プロトコールが利用されていない場合が多く見られる.昨年度に決定した、唾液腺疾患の検査手順に従い、MRI検査前に超音波検査を実施し腫瘍性または炎症性病変の判断を行ったうえで、炎症性病変は、Axial像(T1,T2,T2-fat)とMR-Sialo検査を行い、腫瘤性病変の際はCoronal像(T2)を追加することを原則とした.シェーグレン症候群などの自己免疫疾患やリンパ節転移症例などはT2-fatを実施することで診断レベルが保持された検査時間の短縮が可能となった.自己免疫疾患の際には、耳下腺だけでなく、必ず顎下腺も対象とすることとした. MR-Sialo画像に関しては、MIPの3D像ではどのような方向からでも観察できる利点がある一方、信号が弱い場合は20mmの1スライスの画像の方が唾液腺の描出率は高かった.結果、どちらの方が有効性が高いかは結論でなかった.拡散画像によって画像情報を客観的に手段することを考えていたが使用が制限されたことにより方針を転換余儀なくされたため、撮像された画像より鑑別診断に利用できそうな画像情報について検討した. 結果、画像コントラストや濃度などの影響が比較的少ない各ピクセル信号強度ばらつきを標準偏差で表して画像の均一性について評価を行った.すなわち、唾液腺および腫瘤性病変の画像の均一性の評価を行った. 正常唾液腺(耳下腺:88腺、顎下腺:83腺)と炎症性病変(66症例)、腫瘤性病変(41症例)、自己免疫疾患(10症例)について比較検討した.腫瘤性病変は、腫瘤の間での差異についても検討した.シェーグレン症候群においては、正常唾液腺との間に有意な差をもって示さ、鑑別診断の指標として利用できることが予想された.唾石症に際しては、標準偏差の変動が大きく正常の唾液腺との鑑別は困難であった.
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