研究概要 |
高齢者は,老化や様々な全身疾患を有する事から感染に対する防御力が低下し,口腔感染への感受性は高まっている。要介護高齢者歯垢内、咽頭粘膜上、舌上ともに、真菌,腸内細菌,緑膿菌、肺炎幹菌,黄色ブドウ球菌、セラチア菌などが検出された。そこで本研究では高齢者の口腔バイオフィルム感染症に関わる宿主側の感受性遺伝子を明らかにする事を目的とし検討を行った。 E2F-1 KOマウスは、唾液分泌量が少なく口腔細菌の歯表面への定着も高まって入ることが明かとなった。またE2F-1 KOマウスは、唾液中のアミラーゼ量やムチン量やsIgA量の上昇も認められ、これらの蛋白の分泌に関わる遺伝子もE2F-1遺伝子に加え口腔感染症感受性遺伝子の一つである可能性が考えられた。S.mutans阻害抗体価の高い唾液を有するヒトは、S.mutans量も低下していることが明かとなり、またDRB1^*1501やDRB1^*0406などを含む10種類のHLA-DR遺伝子タイプがその唾液阻害抗体誘導と関与していることも明かとなった。抗SDF抗体を投与したNODマウスにS.mutansを歯表面へ接種してみると、S.mutansを接種してから90や120分後にミュータンスが有意に歯表面へ付着しているのが認められた。これらの結果から、DRB1^*1501やDRB1^*0406などを含む10種類のHLA-DR遺伝子、E2F-1、アミラーゼやムチンやsIgAの分泌に関わる遺伝子、SDF-1などが口腔感染症感受性遺伝子の候補として考えられた。実際のヒトを用いた検討でも、S.mutans付着阻害IgA抗体誘導に様々なHLA-DR遺伝子タイプが関与していることが明らかになり、DRB1^*1501やDRB1^*0406などを含む10種類のHLA-DR遺伝子タイプがその候補として考えられた。 今後は本研究で明らかに遺伝子を用いてさらにモデル動物を用いた実験で検証し、高齢者のDNAサンプルも多数採取して解析を進めて行く必要がある。このような検討を進めて行けば、高齢者の口腔環境を遺伝子検査により予め予測することができ、今後の口腔ケアの進め方に多大な情報を提供していくこととなってくる。
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