研究概要 |
【目的】冠状動脈系心疾患には狭心症と心筋梗塞があるが,高血圧,高脂血症,喫煙が三大危険因子とされている.このほかに糖尿病,肥満なども危険因子に挙げられているが,本研究の目的は,歯周病がこの心疾患の危険因子となりうるか,両疾患の関連について検討することである. 【方法】当大学関連病院の循環器科に来院した患者で,本研究の主旨を説明し同意を得た25名(男性8名,女性17名,45歳〜77歳,平均63歳)に対して以下の項目について診査し,得られたデータは,個々の対象者名が特定できないように番号に置き換えて処理した. 1)心疾患に関する診査:(1)問診および質問票による診査:年齢,性別,家族歴,既往歴,喫煙歴,生活習慣,(2)血圧(SBP, DBP, MBP, PP),脈波伝搬速度(PWV),血液検査(TCH, HDL, LDL, TG, BUN, UA, Cr, FBS, HbA1c),肥満度,服薬名 2)歯周病に関する診査:(1)質問票による診査(オーラルケアの関心度や実践状況,歯科治療歴,歯周病に関する自覚症状),(2)歯周病一般診査(歯周ポケット深さ,プロービング時の歯肉出血(BOP), GI, Plaque Indexと舌苔の状態,口臭(半導体式ガスセンサ:ブレストロン),(3)細菌検査(唾液,縁下プラーク) 【結果】高血圧症と高脂血症を有する群(10名,平均63歳,喫煙率40%)は,そうでない群(15名,平均64歳,喫煙率50%)に比較して,ポケット深さは1.2倍,BOPは1.4倍,口臭は2.6倍,舌苔2.5倍,プラーク細菌数は1.8倍,唾液細菌数は1.3倍と高かったが,危険率5%では両者間に統計的に有意な差は認められなかった.次年度はより多くの研究対象者を求めて,高血圧症や高脂血症の原因や服薬による影響も加味しながら,心疾患と歯周病との関連について詳細なる検討を行う予定である.
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