研究概要 |
【目的】冠状動脈系心疾患には狭心症や心筋梗塞などがあるが,高血圧,高脂血症,喫煙が三大危険因子とされている.このほかに糖尿病,肥満なども危険因子に挙げられているが,本研究の目的は,心疾患の危険因子を中心に,歯周病と心疾患との関連について検討することである. 【方法】当大学関連病院の循環器科に来院した患者で本研究の主旨を説明し同意を得た71名(男性29名,女性42名,年齢:平均61歳(24歳〜77歳))に対して,以下の項目を診査した.データは,個々の対象者名が特定できないように番号に置き換えて処理した. 1)心疾患に関する診査:(1)問診および質問票による診査:年齢,性別,家族歴,既往歴,喫煙歴,生活習慣,(2)血圧(SBP, DBP, MBP, PP),脈波伝搬速度(PWV),血液検査(TCH, HDL, LDL, TG, BUN, UA, Cr, FBS, HbA1c),肥満度,服薬名 2)歯周病に関する診査:(1)質問票による診査(オーラルケアの関心度や実践状況,歯科治療歴,歯周病に関する自覚症状),(2)歯周病一般診査(歯周ポケット深さ,プロービング時の歯肉出血(BOP),GI, Plaque Indexと舌苔の状態,口臭(半導体式ガスセンサ),(3)細菌検査(唾液,縁下プラーク) 【結果】高血圧症患者で喫煙習慣のある心疾患ハイリスク群(32名,年齢61±9)は,喫煙習慣のない心疾患リスク群(39名,年齢61±10)に比べて,平均ポケット深さは1.1倍,BOPは1.2倍,GIは1.3倍,口臭は1.1倍,プラーク細菌数は1.4倍であったが,いずれにも両者間に有意な差は認められなかった.また,培養法により60種以上の細菌が検出されたが,代表的な歯周病菌のP.g菌は検出されなかった.一方,リアルタイムPCRにより,唾液サンプル10例中9例にP.g菌が検出された.今後,さらに例数を増やし,歯周病菌と心疾患との関連について詳細な検討を行う.
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