研究概要 |
近年数多く報告されるようになった野生動物の生殖器異常や繁殖力減少は,環境中に放出された化学物質(Endocrine-disrupting chemicals, EDCs)が動物の内分泌系を攪乱したことにより生じた可能性が高いと考えられている.EDCsは人体へも悪影響をおよぼすことが懸念されているが,そのメカニズムについては不明の点が多い.そこで現時点では, 内分泌攪乱作用が疑われる化学物質の中から使用頻度の高いものを選び,in vitroでのスクリーニングテストおよび動物を用いたin vivo実験から化学物質のリスク評価を行うことが提唱されている. 最近,フェノール骨格を持ち,そのパラ位に脂溶性構造を持つ化学物質が女性ホルモン様作用を不す傾向が強いことが報告された.この分類に属するp-Cresolあるいはp-Chlorophenolは歯科臨床で多用されている根管消毒剤の主成分であるため,消毒剤の一部は女性ホルモン様活性を不すことが予想される.そこで本研究では,in vitroおよびin vivo実験から,内分泌攪乱作用を指標とした根管消毒剤のリスク評価を行っていく. 平成13年度に我々は,歯科臨床で用いられている代表的な4種の根管消毒剤(Formalin/Cresol, FC ; Formalin/Guaiacol, FG ; p-Chlomphenol/Guaiacol, Methocol^【R!○】 ; Guaiacol, Creodon^【R!○】)およびこれらの主成分を被験材料として,まずin vitro実験系であるReporter gene assayにて女性ホルモン様作用を検討した.その結果,FCとMethocol^【R!○】がともに10μg/mL以上の濃度で,p-Cresolとp-Chlorophenolがともに50μM以上の濃度で女性ホルモン様活性を示した.2種の市販根管消毒剤の女性ホルモン様活性は,p-Cresolあるいはp-Chlorophenolに由来すると考えられた.一方,Guaiacolを主成分とする他の2種の消毒剤には女性ホルモン様作用は認められなかった. 現在,活性が認められた2種の市販消毒剤について,卵巣摘出ラットを用いたuterotrophic assayにてin vivoでのリスク評価を行っている.
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