研究概要 |
炎症歯髄組織におけるToll-like receptor family分子特にTLR-2,4および9のmRNAレベルにおける発現様相をin situ hybridizationにて,またTLR-2および4の蛋白レベルにおける発現様相を酵素抗体法染色にて検索した結果,以下の所見を得た。すなわち,1.歯髄組織に浸潤している炎症性細胞の多くでTLR-2のmRNAレベルでの発現が観察され,またTLR4は炎症性細胞の一部において,弱いながら発現が認められた。一方,TLR-9の発現は歯髄組織に浸潤している炎症性細胞の多くに強度の発現が認められた。2.光顕レベルでは,歯髄組織に浸潤している炎症性細胞の一部でTLR-2の弱い発現が観察されたが,TLR4の発現は認められなかった。3.電顕レベルにおいて,TLR2および4のいずれにおいても,形質細胞様細胞の細胞内での発現が認められた他,樹状細胞様細胞においてはTLR2蛋白の発現が,またマクロファージ様細胞においては,TLR4蛋白の発現が認められた。一方,リンパ球と思われる細胞の細胞膜あるいは細胞質内に両タンパクとも発現が認められなかった。これらの所見より,TLR2あるいは4蛋白の合成,細胞膜上での発現および特異的リガンドとの結合によるMyD88以下のシグナル伝達のみならず,endocytosisあるいはpinocytosisにより取り込まれたTLR特異的なリガンドである抗原とTLRの細胞内での会合および認識機構による別のシグナル伝達系の存在が示唆され,またTLRシグナルの活性化による免疫担当細胞からのTNF-α,IL-12p35あるいはp40などのサイトカインの分泌の増加などによる歯髄炎の病態としての憎悪を制御する一要因として重要であることが示唆された。
|