研究概要 |
in vitro象牙質石灰化誘導に対するイオンの影響を調べるために種々の実験を実施し以下の結果を得た。各種イオンを石灰化溶液に添加しインキュベートした試料についてコントロールと比較した。石灰化物のカルシウム量を原子吸光計により測定した結果、コントロールに比較して、ケイ素イオンを添加したものは1.86〜3.08倍、カルシウムイオンを添加したものは、1.23〜1.58倍、リン酸イオンでは、1.48〜1.54倍のカルシウム量が検出され,それぞれ濃度依存的に石灰化誘導が促進されていた。また、フッ素イオンでは、0.1〜0.5ppmを添加したものは、コントロールと同程度のカルシウム量が検出されたが、1.0〜2.0ppm添加したものは、1.45〜1.77倍と石灰化を有意に促進していた。一方、マグネシウムイオンを添加したものは、コントロールに対して1/2〜1/5、銀イオンでは、1/6〜1/7のカルシウム量が検出され、濃度依存的に石灰化誘導を抑制していた。X線回折の結果から、誘導された石灰化物はそれぞれの元素を含む結晶化度の低いアパタイトであることが確認された。また、SEMによる石灰化物の形態観察の結果、板状および針状結晶が認められたコントロールに対して各イオンを添加したものでも同様なアパタイト結晶が認められた。フッ素イオンを添加したものでは、糊状の石灰化物が認められ、石灰化が著明に進行していることが推察された。これらの結果より、in vitro象牙質石灰化実験系において石灰化誘導をケイ素イオン、フッ素イオンは、著明に促進、カルシウムイオン、リン酸イオンも石灰化を促進し、フッ素イオンを添加した場合には、誘導された石灰化物の形態が他のイオンとは異なることがわかった。さらに銀イオン、マグネシウムイオンは石灰化を抑制することが明らかになった。よって、これらの各イオンにより象牙質石灰化に対する影響が異なることがわかった,さらに、従来の時間ごとに試料中のカルシウム量を原子吸光計で測定するのに対して、石灰化誘導を経時的に観察し誘導活性を精密に評価するために電気化学的測定法を用い、応用したところpHの低下が観察された時間に一致してカルシウム量の上昇が確認され、その有用性が確認できた。
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