研究概要 |
顎機能異常と平衡機能の関連性を検討するにあたり,平衡機能の評価には重心動揺計を用いた。 実験条件は日本平衡神経科学会運営委員会の重心動揺検査の手引きに基づき,開眼および閉眼各々60秒間記録とした。また,顎機能異常者に対する指標としては,患者が訴える症状だけではなく,下顎運動が両側顎関節の協調運動であるにもかかわらず,顎機能異常を訴える患者の約9割は片側性の顎機能異常であることから,顎口腔機能の左右不均等な状態が,顎口腔系の左右各要素間の関連状態を反映するのではないかと考えられる。そこでデータ採取に当たり,顎機能異常患者のデータ採取を行うことを前提に考え,簡便に顎口腔系の左右不均等を診査する方法として,デンタルプレスケールによる左右側咬合接触面積およびマッスルバランスモニターによる左右側咬筋におけるAsymmetry Indexと合わせた検討を行っている。重心動揺計のソフトのバージョンアップが昨年末終了し,予備実験として顎機能異常者のデータを採取する前に,対照データとなる顎機能異常を認めないボランティアによるデータの採取を行っている。 現在までにデータの採取を行った5名に関しては,咬合接触面積と咬筋のAsymmetry Indexが一致する被験者が5名中4名で,従来からの報告と動揺の結果が得られたが,重心動揺の振幅および面積におよびその方向については,咬合接触面積とAsymmetry Indexとの間に一定の傾向は認められなかった。これは,これらの検査項目が偶発的な動揺により大きく影響される結果も考えられ,今後の検討項目として平均の重心位置および重心移動距離をデータ解析できるシステムを検討中である。また,ある一定以上の左右差を認めないと重心動揺にその影響が出てこない可能性もあり,患者データの集積を準じ行っていく予定である。
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