研究概要 |
顎機能異常者における顎口腔機能の左右不均等な状態と平衡機能の関連性を検討するにあたり,前年度に引き続きデンタルプレスケール(以下,DP)とマッスルバランスモニター(以下,MBM)について左右側バランスデータとしてAsymmetry Index(以下,AI)および重心動揺計の検討を行った。前年度までに,重心動揺計の専用解析ソフトのセッティングが終了し,基礎的実験を行ってきた。本年度は前年度からの基礎実験の続きとして,3名の被験者を用いて連続した5日間の午前,午後における重心動揺,DPおよびMBMの測定を行い,その変動を検討した。また,得られた結果から,DP, MBMおよび重心動揺との相関を検討した。その結果,重心動揺との相関はMBMではあまり認めらなかったことより,患者データの採取は,DPと重心動揺計の2項目について行った。患者データは顎機能障害を認める患者5名を用い,対照データとして顎口腔系に機能異常の既往,MRI検査における異常および現在顎機能異常の症状を認めないボランティア5名を用いた。患者データは顎機能異常の治療前後に採取を行いその変化を検討したが,対照データも2回採取し,それぞれの被験者群の1回目と2回目を比較することで,被験者の検査に対する慣れによるデータの変化を考慮した。その結果,噛みしめを行った状態における重心動揺について患者群の治療前では正常者群に比べ有意に大きい値を認め,治療後の2回目では正常者群との有意差は認めなくなった。また,周波数解析を行ったところ,2.0-10.0Hz帯域の周波数分布に同様の変化を認めた。また,DPのAIと重心動揺の前後偏差有意な相関を認めた。以上のことより,顎機能障害の有無は直立姿勢における重心動揺に影響をおよぼし,噛みしめによる左右側のバランスは重心動揺の左右だけではなく,前後方向の同様にも影響することが示唆された。
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