1.被験材料:外科的に摘出した根尖病巣30例中、16例が歯根嚢胞であり、14例が歯根肉芽腫であった。 2.iNOS免疫染色:ヒトiNOS特異的抗血清をウサギで作製し、それを用いて歯根嚢胞の免疫染色をおこなったところ、血管内皮細胞、上皮細胞、線維芽細胞およびマクロファージでiNOS強陽性を示した。また、リンパ球や好中球でもiNOS陽性を示した。なお、血管周囲にiNOS陽性細胞が局在していた。 3.iNOSとIL-1βの二重染色法:iNOS陽性細胞がIL-1β陽性を示すものと陰性を示すものとがあった。逆に、IL-1β陽性細胞がiNOS陽性を示すものと陰性を示すものとがあった。すなわち、autocrineあるいはparacrineに作用していることが示唆された。また、IL-1β陽性細胞がiNOS陽性の血管内皮細胞周囲に多く局在していた。 4.誘導型NO合成酵素(iNOS)遺伝子発現の検索:通法に従い、共培養したHUVECならびにPB-PMNsからTRIzolを用いてRNAを分離し、ランダムプライマーおよび逆転写酵素を用いて相補的なDNAを作成したのち、ヒトiNOS特異的PCRプライマーとDNA合成酵素を用いたPCR法により、iNOSmRNAの遺伝子発現を検索した。その結果、iNOS遺伝子の発現を認めた。 5.Southern hybridization法:4.で得られたPCR反応産物をナイロンメンブレン上にSouthern transferし、ヒトiNOS特異的インターナルプローブを作成したのち、非ラジオアイソトープを用いたSouthern hybridization法をおこなった。得られたオートラジオグラフィー上でiNOSのインターナルプローブとハイブリダイゼーションしたシグナルを確認し、PCR法の特異性を確認した。
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