研究概要 |
本研究では,、口腔機能の一つである摂食嚥下機能への加齢の影響を調査することを目的とし,摂食嚥下運動の適切な評価法を確立するとともに,舌特有の味覚による感覚情報と口腔機能への関連を調査した.被験者は個性正常咬合を有する健常有歯顎者(男性5名,女性3名,計8名,平均年齢26.1歳)とした.被験食品は塩味としてNaCl,甘味としてショ糖,酸味として酒石酸,苦味として塩酸キニーネの各水溶液,コントロールの無味として,蒸留水を用いて5%ゼラチンゼリー5gを作製した.測定項目は小型圧力センサによる舌接触圧(以下,舌圧)とひずみゲージによる喉頭運動,喉頭における嚥下音,下顎切歯部の三次元的な下顎運動とした. 分析は下顎運動において見られる安定した咀嚼運動時の最終ストロークが終了した時点を咀嚼嚥下移行時点とし,時間関係の基準点とした.舌圧,喉頭運動の波形上で波形発現時間,最大値発現時間,波形終了時間の3計測点を求め,咀嚼嚥下移行時点との時間関係と運動開始時点と最大値発現時間との出力差から最大舌圧を求めた.また,波形発現時間から最大値発現時間を最大値発現までの所要時間,波形発現時間から波形終了時間を総嚥下時間として算出した.嚥下音は最大振幅時点を嚥下音発生時間とした. その結果,味覚を付与することにより,舌や喉頭運動の時間関係に対しての影響がみられた.また,最大舌圧と喉頭の最大運動量は,全ての味で無味より小さくなる傾向が見られた.このことから嚥下運動の前段階である咀嚼期での味覚の重要性が考えられる. 次年度は,健常者のデータを詳細に検討し,摂食嚥下運動の評価について検討するとともに,味の濃度についても調査を行い,高齢者を被験者とした加齢による影響を調査する考えである.
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