研究概要 |
口腔衛生状態の低下は,う蝕や歯周疾患などの口腔内疾患のみならず,高齢者における誤嚥性肺炎などの呼吸器系の感染症と密接に関連していることが報告されている.未曾有の超高齢化社会を向かえている我が国においては,高齢者の多くが,口腔内細菌が容易に繁殖・定着しやすい義歯の使用者であり,口腔内疾患ならびに全身疾患を誘発しやすいことを考えると,適切なデンチャープラークコントロールを行うことが重要である.さらに,日常生活動作能力が低下している要介護高齢者や障害を持つ高齢者に対しては,より簡便で,短時間に確実な除菌ができる義歯の洗浄方法を確立する必要がある.一般に,デンチャープラークコントロールには,機械的洗浄と化学的洗浄が推奨され,さまざまな義歯洗浄材が市販されている.しかし,これまでの研究で,市販の製品はコスト面から十分に普及しているとは言い難い状況であることが報告されている. オゾン水は強力な殺菌効果を有し,また一定の時間経過で最終的には元の水に戻ることから,中和,洗浄,清掃などの後処理の必要がなく,塩素系酸化剤のように残留による2次汚染の心配がない.そこで,本研究では,オゾン水の特性に注目し,種々の口腔内細菌に対するオゾン水の殺菌効果について検討した.さらに,デンチャープラークで,問題となるCandida albicansに対する殺菌効果を検討した.とくに,今回の実験では,アクリルレジンに付着したC. albicansに対するオゾン水の殺菌効果を検討したところ,オゾン水の殺菌力を効果的に発揮させるためには,オゾン水を作用させる前の水洗や超音波洗浄が有効であることがわかった.また,オゾン水を作用させる方法や溶存オゾン濃度および作用時問によって,殺菌効果に差が認められた.
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