研究概要 |
今年度は,インプラント上部構造の咬合面の材質評価の基礎実験として,正常有歯顎者の側方咬合位において軽く咬合した場合と強く咬合した場合の咬合接触状態を,作業側および平衡側で同時に記録し,咬合力の変化に伴う咬合接触状態(咬合接触面積)の変化について検討を行った. 被験者は,顎口腔系機能に自覚的,他覚的に異常が認められない正常有歯顎者8名(男性4名,女性4名,平均年齢28.3歳)で,各被験者に実験の趣旨を十分説明し,同意を得たうえで測定を行った. 咬合記録は,今回新たに開発した咬合記録用個人トレーを用いて,咬頭嵌合位,及び左右側方咬合位(1,2,3mm)で採得した.側方咬合位は,上顎前歯部に装着した弾筆型スタイラスで,下顎前歯部に装着したプラスティック板にあらかじめゴシックアーチを描記させ,そのトレース線上に咬頭嵌合位から1mm,2mmおよび3mm側方位に開けた孔にスタイラスの先端を適合させることによって規定した.咬合力は両側咬筋のEMG波形をコンピュータディスプレイ上でVisual feedbackしながら,10%程度の軽い咬みしめと,50%程度の強い咬みしめとし,それぞれの顎位において,咬合記録を採得した.採得した咬合接触の評価は,当教室で考案したデジタルカメラによる咬合面形態と咬合接触像の記録法を用いた. その結果,作業側の咬合接触面積は,いずれの被験者も咬みしめにより大きくなった.特に咬頭嵌合位から1mm側方位において接触面積が大きく増加する場合が多かった.平衡側では,作業側に比べ,咬みしめにより接触面積が増加する被験者と,ほとんど変化しない被験者がみられた.平衡側で接触面積が増加する顎位は,作業側と同様に1mm側方位で,軽く咬合した際にはほとんど接触していなかった部位に接触が生じて面積が増加した場合と,平衡側で元々接触していた領域の面積が増加した場合とがあった.
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