研究概要 |
本年度は,ITIインプラントを下顎臼歯部に装着した3名の被験者について,インプラント上部構造の咬合面の材質を金属(白金加金),陶材および硬質レジンと変化させて,咬合接触面積,ガム咀嚼時の咀嚼筋活動量と咀嚼リズム,咀嚼能率を測定した.測定時期は,上部構造装着直後,装着1か月後および2か月後のそれぞれにおいて行い,それぞれ上部構造の材質による違いを測定項目ごとに検討を行った. 一方,本研究に先立ち正常有歯顎者12名について咬合接触面積と咀嚼機能との関連についても検討を行ってきた.その結果,咬合接触面積は,咬頭嵌合位,側方咬合位の作業側および平衡側で強く咬合することにより増加し,その増加量は,咬頭嵌合位,作業側,平衡側の順に大きかった.作業側では,軽く咬合した場合の咬合接触面積と強く咬合した場合の増加量との間に相関性がみられたのに対し,咬頭嵌合位と平衡側ではその傾向はなかった.すなわち,作業側では咬頭嵌合位や平衡側と異なり,軽く咬合した場合の咬合接触面積が大きいほど、咬合力の負荷に伴う咬合接触面積の増加量も大きいという関係が認められた.また,咬合接触面積と咬合力による接触面積の増加量は,開口相時間,閉口相時間,サイクルタイムに影響しており,接触面積が大きい場合や咬合力による接触面積の増加量が大きいと開口相時間,閉口相時間,サイクルタイムが長いという関係が認められたが,それらと咀嚼リズムの安定性には大きく影響していなかった.以上の結果についてその要旨を現在日本補綴学会誌に投稿中である.これらの結果と本研究の結果を比較検討する予定である.
|