研究概要 |
これまでの検討は,市販の試薬の中からメタクリル基1個に対してカルボキシル基あるいはリン酸基1個を有する最も単純な構造である接着性モノマーを選定して,これを歯科用金属に電着した.すなわち,2-methacryloxyethyl hydrogen succinate (SA)や2-methacryloxyethyl dihydrogen phosphate (P-1M)を歯科用18k金合金,12%金銀パラジウム合金,コバルトクロム合金およびチタンに電着し,有効な処理条件の検討を行ってきた.これらの接着性モノマーは,単純な構造をしているため,電着の有効性を検討するのに適しているが,これらのモノマーは,歯科用に市販されている接着性モノマーやプライマーには応用されていない.そこで,現在までに検討してきた電着の方法がより複雑な分子構造を有する歯科用の市販接着性モノマーや市販プライマーに応用できるかについて検証しておく必要がある.また,歯科臨床に応用するためには,技工室での作業や補綴物の口腔内修復などをあらゆる状況に対応できる方法を確立することも重要である.そこで,市販歯科用接着性モノマーやプライマーを電着に応用するとともにより簡便な方法を確立することを目的として,歯科用接着性モノマーとして広く臨床応用されている4-META(4-methacryloxy ethyl trimellitate anhydride)を選定し,これを歯科用金属に電着した場合の有効性および新しい電着方法について検討した.すなわち,4-METAを水とアセトンの混合溶媒に分散させてセラミック繊維からなるリボンに含浸させ,これをカーボンブロックと歯科用金属との間に介在させて通電することで,歯科用金属に4-METAを電着させようとする方法である.その結果,歯科用チタンと歯科用レジンとの接着強さは10.7〜16.1MPaを示した.すなわち,この方法は4-METAの電着が可能であり,歯科用金属とレジンとの接着強さを向上させるのに有効な手段であることが判明した.
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