研究概要 |
歯科用金属と歯科用レジンとの接着性向上を図るため,新しい金属表面処理方法である電着の検討を行ってきた.すでに,メタクリレート基1個とカルボキシル基またはリン酸基を1個有する単純な構造のモノマーを用いて検討した結果,歯科用金属への接着性モノマーの電着が可能であることが判明した.今回はこの方法の実用性を高めることを目的とし,歯科臨床で広く使用されている接着性モノマーの一つである4-META (4-methacryloxythyl trimellitate anhydride)への応用を試みた.すなわち,このモノマーを水溶液(加水分解して4-METAが4-METに変化)とし,18k金合金,金銀パラジウム合金およびチタンへ電着して,その面に対するレジン系材料の接着強さについて検討した. その結果,歯科用金属とメタクリレート系レジンとの接着強さの最大値は18k金合金では,8.7MPa,AgPdでは9.4MPa,Tiでは11.6MPaであり,効果的な処理条件は,18k金合金では溶液濃度20%-処理電流50mA/cm^2,AgPdでは10%-10〜100mA/cm^2,15%-1〜100mA/cm^2および20%-1〜5mA/cm^2の広範囲,Tiでは5%〜20%-1mA/cm^2の範囲であった. さらに,より臨床に近い条件として,サンドブラストしたチタン表面に4-METAを配合して市販されている接着性レジンセメント液を電着し,これに硬質レジンを築盛して接着強さを測定した.また,同時に被着金属を鋳造した場合およびしない場合検討し,鋳造が電着に与える影響についても検討した. その結果,市販接着性レジンセメント液は電着に応用できること,その接着強さは鋳造しないチタンでは11.8〜19.8MPa,鋳造したチタンでは11.1〜18.8MPaであることが判明した.また,鋳造した金属はそうでないものに比較して最大値で約1MPa小さい接着強さを示した.
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