研究概要 |
高齢者に対する訪問歯科診療時の印象の消毒に着目し,印象精度の低下を伴わない消毒方法のマニュアルを作製することを目的として実験を行なった.アルジネート印象材は,水中での寸法変化の小さいAFIII(水中60分間の寸法変化74μm/5mm)および寸法変化の大きいJLP(115μm/5mm)を選択し,印象用トレータイプが印象の薬液浸漬消毒による片側顎堤断面模型の寸法精度および変形に及ぼす影響について検討した.トレータイプは,有孔および無孔,近遠心方向が密閉および開放のそれぞれを組合せた4タイプ(有孔密閉,.有孔開放,無孔密閉,無孔開放)とした.印象の薬液浸漬条件は,1%次亜塩素酸ナトリウム溶液中10分間浸漬(1SH)および2%グルタルァルデヒド溶液中30分間浸漬(2GA)とし,比較のため印象を薬液浸漬せず(無処理)に模型を作製した. その結果,無処理では,AFIII,JLPともトレータイプによる模型の寸法変化の違いが認められた.1SHでは,AFIIIのすべてのトレ-タイプとJLPの有孔密閉は,印象の薬液浸漬が模型の寸法および形態の変化に及ぼす影響は小さかったが,JLPの有孔開放,無孔密閉,無孔開放は,印象の薬液浸漬による模型の寸法および形態の変化が認められた.2GAでは,AFIII,JLPともすべてのトレータイプで,印象の薬液浸漬による模型の寸法および形態の変化が認められたが,トレータイプによる模型形態の違いは認められなかった. 以上から,高齢者への訪問歯科診療においてアルジネート印象を消毒する場合,いずれのトレータイプでも,印象材は水中での寸法変化の小さい製品を選択し,1%次亜塩素酸ナトリウム溶液中10分間浸漬による方法によって,印象の薬液浸漬による模型の寸法精度および変形への影響を少なくできることが判明した.
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